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名古屋地方裁判所 平成7年(わ)1619号 判決 1995年12月25日

裁判所書記官

守山みずほ

被告人

名称 藤和ライト工業株式会社

本店所在地

名古屋市昭和区雪見町三丁目六番地

代表者

齋藤一郎

氏名 齋藤一郎

年令

大正九年五月一〇日生

本籍

名古屋市昭和区車田町一丁目一〇番地

住居

名古屋市昭和区雪見町三丁目六番地

職業

会社役員

検察官

田中知子

弁護人

宮澤俊夫(国選弁護人)

主文

被告人藤和ライト工業株式会社を罰金四、五〇〇万円に、被告人齋藤一郎を懲役一年六か月に処する。

被告人齋藤一郎に対し、この裁判確定の日から三年間刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人に負担させる。

理由

(犯罪事実)

被告人会社藤和ライト工業株式会社(以下、「被告人会社」という。)は、名古屋市昭和区雪見町三丁目六番地に本店を置きプラスチック工業による製品の製作・販売等を目的とする資本金三、七九三万三、五〇〇円の株式会社であり、被告人齋藤一郎は、被告人会社の代表取締役として、その業務全般を統括しているものである。

被告人齋藤は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一  平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における所得金額が二億一、五八四万三、三九七円であったにもかかわらず、平成三年二月二六日、名古屋市瑞穂区瑞穂町字西藤塚一番地の四所在の所轄の昭和税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、五一一万七、二四一円で、これに対する法人税額が三、一五三万三、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を経過させ、もって不正な行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額八、三八二万円と右申告税額との差額五、二二八万六、一〇〇円を免れ、

第二  平成三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における所得金額が二億四八六万四一六円であったにもかかわらず、平成四年二月二七日、前記昭和税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七、九二二万六、一九九円で、これに対する法人税額が二、七五八万三一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を経過させ、もって不正な行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額七、四六九万五、九〇〇円と右申告税額との差額四、七一一万二、八〇〇円を免れ、

第三  平成四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における所得金額が二億八八八万五、二二二円であったにもかかわらず、平成五年二月二五日、前記昭和税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九〇六七万三八五四円で、これに対する法人税額が三、二一二万三、四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を経過させ、もって不正な行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額七、六四五万二、九〇〇円と右申告税額との差額四、四三二万九、五〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

全事実につき

1  被告人(被告人会社代表者)齋藤一郎の

(1)  公判供述

(2)  検察官調書二通(乙7、8)

(3)  大蔵事務官に対する質問てん末書六通(乙1ないし6)

2  若山嘉延の検察官調書五通(甲25ないし29)

3  若山京一、小川博司、熊谷良子、齋藤すヾ、若山佳余子、齋藤聡美、小川美智子の各検察官調書(甲30、31、33、34、35、36、38)

4  若山ひさの大蔵事務官に対する質問てん末書(甲37)

5  小川純二の査察官調査書六通(甲9、11、13、15、20、21)

6  尾谷淳の査察官調査書二通(甲17、19)

7  閉鎖登記簿謄本(甲1)、登記簿謄本四通(甲2ないし5)

第一事実につき

8  証明書(甲6)

9  脱税額計算書(甲22)

第二事実につき

10  証明書(甲7)

11  脱税額計算書(甲23)

第三事実につき

12  証明書(甲8)

13  脱税額計算書(甲24)

(法令の適用)

罰条

被告人会社 法人税法一五九条一項、一六四条一項(情状にかんがみ、同法一五九条二項を適用)

被告人齋藤 同法一五九条一項

刑種の選択(被告人齋藤関係)

懲役刑

併合罪の処理

被告人会社 平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法(以下、「改正前刑法」という。)四五条前段、四八条二項

被告人齋藤 改正前刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の罪の刑の加重)

刑の執行猶予(被告人齋藤)

改正前刑法二五条一項

訴訟費用の負担 刑訴法一八一条一項本文

(量刑の理由)

一  本件の逋脱税額は合計一億四、〇〇〇万円余りの多額にのぼり、その逋脱率は六一パーセントを超える高率に及んでいる。

また、犯行態様も、売上除外、架空給与の計上、材料費の水増し計上、機械類の減価償却費の過大計上などの方法で、計画的・組織的に行ったものであって、悪質である。

しかも、被告人会社は、昭和五四年ころに本件と同様の脱税が発覚し、修正申告をするなど、厳しく反省・自戒を求められたことがあったにもかかわらず、いままた本件一連の犯行に及んでいる。

更に、犯行の動機をみても、主として簿外資産を隠匿して将来の経営危機に備えようとしたものであって、要するに、私利・私欲に出たものに過ぎず、とくに酌むべき点はない。

犯情は、甚だ芳しくなく、被告人会社の刑事責任には軽視できないものがある。

二  被告人齋藤は、自ら経理担当者に脱税額の目安を示して脱税を指示するなど、本件一連の犯行において、最も主導的で積極的な役割を果しており、その果たした役割にかんがみると、その刑事責任は決して軽くない。

三  しかし、被告人会社は、平成六年一〇月には本税はもとより、重加算税や延滞税等を全て納付するなど、反省しているものと認められる態度を示している。

更に、被告人齋藤については、前科のないこと、その健康状態や年令等をも併せ考慮して、より一層の反省を求めるとともに、再犯防止の措置に万全を期すべく改めて再検討するよう促しつつ、今回にかぎり、刑の執行を猶予することとして、主文のとおり、量刑する。

(裁判官 川原誠)

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